日常に、ナチュラルなbossaを。

瀬戸内住みのフォトグラファー・アートディレクターがつづる瀬戸内ノスタルジー探しと旅とクリエイティブブログ。

フィルムカメラ ラスト1コマ公募写真展

フィルムカメラ ラスト1コマ公募写真展

2017年7月、子どもが生まれる前に写真展に参加した。いつも見ているサイトで見つけた写真展。フィルムの最後に収められた写真を展示するという内容。初めはどのフィルムを選ぼうかと思っていた。以前にもブログで書いたが失敗した写真・フィルムはたくさんあるのだ。しばらく悩み、ふと思った。今までで一番悔しかった撮影のフィルムはどうだろう。

それはまだフィルム写真を始めてすぐの頃、友達と沖縄へ旅行をした。その旅行はフィルム写真をメインに撮影しようと決めて、「よし!あとは巻き上げたらおしまいだ!」というところまできて、ガギッという音とともに巻き上げを失敗したというフィルムが2、3本でてしまった旅行なのだ。あれは今思い出しても悔しかった旅行だ。それまで沖縄の風景を自分の目で見て、思い出に残したいと思ったからフィルムに収めたのにそれが一瞬でパァになる。辛い…今思い出しても、想像しても辛い。

そんな苦い経験の残る沖縄旅行のフィルムはどこだと、引き出しからこれまでの写真一式を引っ張りだしてきた。久しぶりに現像した写真を見てみるとあの沖縄旅行の記憶が蘇ってきた。飛行機を降りてむっとする空気が体に張りついてくる感覚や透き通るような青い海と白い砂浜を見た時の感動。すぐに思い出せる。でもフィルムでは少しの量しか残せなかった。様々な思いを思い返しながらフィルムのラスト1コマを探す。

出てきたのは2枚。(ということは2本しかフィルムを現像に出せなかったんだね)

そして写真展に応募した写真を決めた。

 

 

感光した1枚の写真

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沖縄のある団地の写真を撮影した時、鯉のぼりが青空を舞っていたのだ。そしてフィルムを交換するかしないかの瀬戸際で撮影したもの。鯉のぼりも写っていなければ、沖縄でなくてもいい写真とは思うが、私はこの写真に決めた。なぜなら、父親から譲ってもらったカメラで初めて旅先の写真を撮影し、唯一残せた写真だから。そして写真を残すことで父との共通の趣味を楽しめた気がしたから。照れくさいが父と時代を超えた交換日記をしたような、そんな気持ちだったのだ。まぁ、そんなことは父には口がさけても言わないし、この写真も見せてはいないが、そんなことを思い写真展に参加した。

そしてこの写真展は作品のエピソードも添えるように、となっていた。写真についてのエピソードはパソコンでも打って提出できたのだが、私は手書きを選んだ。どうしてもこの写真には整った美しい文字より、下手でもなんでもいいから自分の字で気持ちを書くことが大切な気がした。書いたエピソードはここに書いてある内容をコンパクトにしたもの。でも思いは十分綴れたものになった。

 

シャッターを押した瞬間の記憶を体が覚えている

 

写真展に参加して感じたことは、写真を撮った本人にはカメラのファインダーを覗いてシャッターボタンを押し、フィルムに焼きつけた瞬間の記憶までが残っていることがあるということ。その時に見ていた風景や光、音、空気の中の湿度、被写体の表情や気持ちまでを、写真を見返した時にふっと蘇る。体は自分が思っている以上に、シャッター押したその瞬間の感触を覚えているようだ。

フィルムカメラの焼き付けるという行為が思いがけないことを感じさせてくれた写真展になった。

 

 

カメラピープル「フィルムカメラ ラスト1コマ公募写真展」終了しました! | 東京・学芸大学の写真店「monogram(モノグラム)」&オンラインストア スタッフブログ

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